2012年5月10日木曜日

第3回佐渡ゼミのご案内


6/3(日) 第3回佐渡ゼミ 於:トキ交流会館 (予約不要)
①13:00~14:00 東邦大学理学部3年生による佐渡実習の成果報告
「大佐度地域2河川における、水生昆虫の流呈分布(上流、中流、河口域)と環境要因との関係」
②14:00~14:40 瀧本岳先生(東邦大学理学部)
「食物連鎖はどこまで伸びる?-バハマ諸島での研究から
【要旨】
 「食物連鎖」の概念は比較的あたらしく、イギリスのチャールズ・エルトンが、自然界にはいろいろな長さの食物連鎖があることを指摘したのが80年くらい前である。それ以来、生態学者は、食物連鎖の長さがどんなしくみで決まるのかを明らかにしようと研究をかさねてきた。古典的に主流だったのは、一次生産性の大きさや撹乱の強さによって食物連鎖の長さが決まるとする仮説である。しかし近年、食物連鎖が成立している生態系の物理的サイズ(生態系サイズ)が食物連鎖の長さを強く制限しているという証拠が、湖や河川の食物連鎖において見つかりはじめた。そこで私は、陸上生態系の食物連鎖でも生態系サイズの効果が見つかるのかを調べるため、バハマ諸島の様々な面積の島の食物連鎖の長さを比較した。また、比較的静かな内海と荒れやすい外海にある島を比較することで、撹乱が食物連鎖の長さに与える影響も評価した。それぞれの島の上位捕食者を調べ、その栄養段階を安定同位体比から推定し、食物連鎖の長さを島間で比較した。その結果、撹乱が強くなっても、上位捕食者がトカゲから網グモに交替するものの両者の栄養段階は違わないため、食物連鎖の長さに違いは生じなかった。その一方で、生態系サイズが106倍になると、上位捕食者の栄養段階が1段階分増えて食物連鎖が長くなっていた。このバハマ諸島の結果を理論的に説明するために、食物連鎖における食うものと食われるものの関係を単純化した数学モデルをつくり、一次生産性や撹乱、生態系サイズがどのように相互作用して食物連鎖の長さを決めているのかを調べた。このモデルから、食うものと食われるものが強く結びついた生態系では、生産性が高すぎたりや撹乱が弱すぎると食物連鎖が短くなるが、それでも食われるものの移動能力が高ければ、十分大きなサイズの生態系では、食物連鎖は長くなることが分かった。また、バハマ諸島の結果と他の湖や河川からの結果をあわせて総合的に解析し、一次生産性、撹乱、生態系サイズの食物連鎖長への影響の強さを比較した。その結果、いろいろな生態系を平均してみると、生態系サイズおよび一次生産性の影響は強いこと、しかし撹乱の影響はあまり強くないことが分かった。また、一次生産性の影響の強さは、どの生態系でも比較的同じ強さで現れるが、生態系サイズの影響の強さにはばらつきがあることが分かった。

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